おじさんは予防線にはなりません
第5章 誤解と打算
電車の窓ガラスに映る自分を見ると、どんよりと重たい気持ちになる。

……なんで行くとか言っちゃったんだろ。

宗正さんに花火大会に誘われて、OKの返事をしていた。

宗正さんを好きになれば池松さんを忘れられる、そう考えなかったとはいえない。

酷い女だってわかっている。

だからなおさら、行きたくないのだ。

……でも、約束しちゃったんだし。

せめてゲリラ豪雨にでもなって中止になればいいと思うが、窓の外は憎いくらいに雲ひとつない青空だった。


「よく似合ってるね」

待ち合わせ場所に行くと、私を見つけた宗正さんはぱっと顔を綻ばせた。

「……ありがとうございます」

褒められるとなんだかこそばゆい。
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