運命だけを信じてる
第1章

エレベーターホールで向き合った私たちは、貼り付けた笑顔で挨拶を交わす。


「はじめまして、前山有希です」


「はじめまして、小牧真矢です」


マエヤマ ユウキ、コマキ シンヤ。
お互いに耳馴染みのない響きを受け止めて、失礼のない程度で相手を観察する。


私より2つ年下の27歳と聞いているけれど、毛先を弄ばせたその髪色は綺麗な金髪だった。


待って?
ここはアパレル系の会社ではないし、むしろお堅い業界だ。男性社員に髪を染めている者は私の知る限りいないのだけど…。


もしかして他の会社と勘違いしている?

私が出迎えを任された新入社員は別の子?
でも名前は合っていたし、同姓同名なんて確率は低いはずだ。


…ということは、この金髪男が私が任された教育係の対象となるわけで…無理!社会人になってまで金髪でいるような男を教育するなんて、大役どころかありえないでしょ!

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