旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
プロローグ 〜魔性の女〜
「全く…あいつは魔性の女だな」


真夏の盛り、常連になった焼き鳥屋で俺は愚痴をこぼし始めた。


「あん?」


俺の隣でハツの串を握り、モグモグとそれを噛みしめてる相手は、厄介者を見るような目つきで振り返った。


「あいつだよ、あいつ。未彩。散々俺のことを振り回しといてさ。結局ステーキ奢るからこれまでのことをゴメン、と謝っただけで後は知らん顔なんだよな」


庭も旦那と作るからもう平気、とか笑って言いやがるし、それなら最初から俺に依頼すんなって言うんだ。


「それに俺は礼なんて要らねぇと断ったのに、旦那から言われたし、そういう訳にはいかない、と言って頑固に押し切りやがって」


まあその礼として奢って貰ったステーキは美味かったけど…と悔しいながら認めれば、飲み仲間になってくれてる事務員のおばさんは、「ケッ」という感じで唇を突き出した。


「あんたね、あーいうのは魔性とか言うんじゃなくて、天然って言うのよ。
未彩ちゃんが一々あれこれ考えて、あんたにお願いなんてしてると思う?

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