美咲が帰り一人になると、悠莉はラグの上であぐらをかきながらスマホの画面を睨んでいた。

自分から電話しようと意を決してボタンを押し始めた時に、ブルブルとスマホが震え、着信画面になった。

大地からである。


「も、もしもし?」


緊張のあまりどもってしまった悠莉だが、電話の向こうの大地は気にした様子もない。


「よう。今何してんの?」

「家でゴロゴロしている」

「あ、ならちょうどいい。ちょっとグループLINE見てみろ」


大地の普段とまったく変わらない声を聞くと、意識しているのは自分だけのようで、恥ずかしくなると同時にバカバカしくなってくる。

グループLINEを開くと、来月に子会社の野球部と試合があるためなるべく女性社員全員参加せよと、営業部部長からのお達しがあった。


「女子はマネージャーか応援だとさ。青木以外は」

「ん?なんだって?」

「よく見ろ、選手一覧にお前の名前入ってるぞ」

「あ、本当だ」


しかし一体なぜ、女子社員の中で唯一選手になってしまったのか。

新入社員の女子に陸上部出身の子がいたはずだが、そっちが選手じゃないのはなぜなのか。

その疑問に答えてくれたのは大地だった。


「去年の試合で、うちの部長の代理でお前バッターボックスに立っただろ?見事にホームラン飛ばされたのが悔しいからリベンジしたいって、あっちの課長直々のご指名らしいぞ」

「うわ、マジか。あの人熱血すぎて苦手なんだが……」

「高校時代は野球部のエースピッチャーだったって散々自慢してからのホームランだからな。お前への恨みは深そうだ」

「なんだそれ。逆恨みも良いところだろ」


社内の野球部の面子はなかなか変わらない。

子会社の課長に目をつけられたことにより、今年からは悠莉も強制的にチームに参加である。


「っていうか、なんで毎年6月に試合なんだろうな」


だるそうな大地の一言に、確かにと同調する。


「言われてみれば、梅雨真っ盛りの時期にわざわざ試合することないよな」

「そもそもうちは社内行事が多すぎる。4月に花見、6月に野球の試合、7月に納涼会、12月に忘年会。なんで上半期こんなに予定詰まってるんだよ」

「端からみたらあたし達すごくリア充だな。経理部の意見をどうぞ」