桜の木に寄り添う

手紙

次の日。

「なつー!!同窓会あるんだってー?」

 店長から言われた。

 店長は、思いやりがあってとってもガサツな所もあるけれど、優しい人。
 田舎だから、情報がすぐ回ってしまう。

「さすが店長!話早いねー。今回は誰から聞いたの?」

「内緒だよー!楽しみじゃん!」

「べつにー。いつもと変わらないよー!いつものメンバーだし 」


 ……でも今朝……実は。


 毎日私は、いつも同じ道を通って出勤している。
 いつも何も変わる事ない普通の道。
 でも、今日は。
 いつもとは違う事が起きていた。
 桜の木の枝に、見知らぬハンカチが枝にくっつけられていた。
 誰かの落し物かな?と思ったけど、あまり人通りの多い場所でもない。

 それに木に誰かに気づいてほしそうに結ばれていた。
 こんな所にあるなんて……。
 いったい誰が。

 私は、『 落し物 』と書いたメモを添えてみた。

 仕事も終わり。
 あのハンカチとメモがずっと気になっていた。

 カタカタカタカタ。
 いつよりも気分は足早になっていた。

 早く見に行こう。

 暗い中、何かがぶら下がっているのが見えた。

 私が書いたメモとは違うメモが、添えられていた。
 そこには……。

『 落としてません 』

 それを見た私は、少しだけ。ほんの少しだけ。

 クスッと笑ってしまった。

 いったい、このハンカチはどんな意味があるんだろう。


 私は、部屋に戻り、手紙の返事を書いた。

『あなたは、なぜハンカチを?』



 それからは、変な手紙のやりとりが始まった。
 なぜ、知らない人とこんなやりとりをしているのかはわからないけど、楽しいと思えてしまっていた。
 平凡な日常から、少しずつ離れていくのを感じていた。


 そういえば……明日は、同窓会か。
 何着て行こうかな。

 きっとみんな都会から来るし、お洒落してくるよね。

 私は、お洒落も大好きで毎日毎日、服選んだりネイルをしたり。


 それに田舎っぽいとか思われたくなくて

 ネイルも念入りに頑張ってみた。

 サクライロのピンクのネイル。

 そうだ。

 ストーンもつけちゃおう。

 私の大好きな花。サクラ。
 桜の花びらを描くように散りばめた。
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