幼馴染は恋をする
・罪は誰に
知らないうちに、なんて、よく聞く気づかなかった時の後悔の言葉だ。
今、それは朝の家に、親の心の中にぼんやりあるに違いない。
卒業式も終わった。
試験も終わった。合格発表も終わった。それぞれが希望の高校に受かった。

今は春休みだ。進級する時と違って、進学する者にとって春休みは妙な緊張とともに過ごす、暇な時間だ。


「なあ、誠人。また同じ組になると思うか?」

「思うね、断言する」

「フ、相変わらず根拠のない自信だな」

「根拠はある。強い絆だ」

「腐れ縁の方が強いんじゃないのか?」

「それだ。なんかさ、温くなってきたな。春ってさ、こう、ピシッとしないっていうかさ、眠くてしょうがない」

「眠いのは年中だろ?」

「それを言ったら身も蓋もない」

「…俺も怠い」

「なあ、会ってるか?」

「誰と」

「はぁ、絶対わざとだよな、いっつもそうだ。朝ちゃんのことを聞くと変に鈍くなるのな」

「朝って言わなかっただろうが。会ってないよ、全然…」

「連絡も?」

「全然…」


ゴトンゴトン、カタカタカタカタ…。

「…わ、俺、もう話してる余裕ないかも。わー、キャー!うお゙ーー」

「…煩いな、乗ろうって言ったのは、お前だろ?」

「だ、だって、こんなとこに来といて、これに乗らないなんて、わ、わ、わ、わー、ないだろ?わーーー、ふーー」

…何が楽しくて誠人と遊園地なんて。

「あ、あ、あ。あと、観覧車だからな。キャーー、ヤッホーイ!」

「観覧車って…」

「乗っておかないとな、うわ、うわ、わー、……気持ちいいー、すっげー、顔の肉が…ハハハ」

…恐いんじゃないのかよ。


「はあ、エネルギー使った、なあ?」

「お前だけだろ?」

「あ、観覧車あっちだ」

…聞いてんのかよ。ドン。

「お、馬鹿、急に止まんな、危ないだろ」

「…貴浩、俺…、見間違いかな」

「ん?何が」

「あれ…」
< 68 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop