『──えっ?! 越智、あのめちゃくちゃかわいい彼女と別れたのか?!』



入行から約2ヶ月。

リーズナブルなチェーン居酒屋で初めての同期会の真っ只中、一際大きな声が耳に届いた。

声の主は、この団体客用の広い座敷に置かれた長テーブルの中央あたりに座る菊池くんだ。

右隣には越智くんがいて、何やら彼が菊池くん含む数名の男性たちに尋問されているらしい。

隠すことなく迷惑そうな顔をしているのが、少し離れた端っこにいる私からも見てとれる。



『なんでだよ、理由は? まだ付き合って半年も経ってないんじゃなかったか?』

『よく覚えてるな。まあ、いろいろあって』

『だから、そのいろいろが知りたいんだよ! イケメンの失恋話、酒の肴にさせろよ』



まだ付き合いは短いながらもあけすけな同期たちの言葉に、越智くんはさらに苦々しい表情だ。

そして、諦めたようにため息を吐いた。



『失恋って……まあ、振られたのは俺だな。結婚を催促するようなこと言うから「最初からソレはないって約束だろ」って答えたら、キレられてそのまま別れることになった』



投げやりな様子で答え、越智くんがジョッキのビールを呷る。

一瞬ポカンとしていた菊池くんだったけれど、少し遅れて『いやいや』と反応した。