貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
2.いつの世にも王子様はいるの巻
時はまた少し流れて、霜月を迎えた。
十一月である。

新暦では十月になるこの月は、霜が降りる月というだけあって季節は冬だ。
日を追う毎に、寒さが急ぎ足で追いかけてくる。

ハァーと息を吹きかけて指先を温めながら、花菜は空を見上げた。

晴れ渡った朝焼けの空に雲は見当たらない。

空気も乾燥しているので、乾物を作るにはちょうどいい天気だった。

材料になる野菜を取りに向かうと、ちょうどその下屋から小鞠が出てきた。
籠を手にして、満面の笑みを浮かべている。

「姫さま、見てください。また届いておりましたよ」

小鞠が見せた籠の中には、海藻や魚介の干物が入っている。

「すごいわ! 干しアワビまで」

中には高級食材もあった。

それらの食材の下には梶の葉が敷いてあり、葉の隅には、墨である印が書かれている。

『傀』の一文字。
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