相思相愛ですがなにか?
2.陰謀だらけのプロポーズ

「月子、まだかよ!!」

お兄ちゃんは先ほどからイライラしたように私の部屋のドアを何度もノックしていた。

「待って!!あと5分だけ!!」

私はそんなお兄ちゃんのことなど意に介さず、ひたすら鏡とにらめっこをしていた。

ドレッサーの上にはメイクブラシとアイシャドウのパレットが散乱しており、ベッドには幾重にも吟味を重ねた結果、洋服が惨憺たる有様で並べられていた。

(リップの色はマットな赤?それとも愛らしいピンク?)

さあ、どっち!?

「いい加減にしないと破談にするぞ」

あと5分と言いながらも一向に部屋から出てこない私に業を煮やしたのかお兄ちゃんが容赦ない脅しをかけてくる。

いや、お兄ちゃんはやると言ったらやる男だ。

有言実行で破談にされては困ると、私はようやく身支度の仕上げにかかった。

睫毛に念入りにマスカラを塗りなおし、唇にリップを引いて、最後に姿見の前で一回転する。

髪は見苦しくないように王道の編み込みスタイル。

セクシーさを抑える代わりに、おくれ毛をちらつかせてうなじの綺麗さをアピールする。

おろしたてのモスグリーンのワンピースは贔屓にしているブランドの最新作で、身体に沿った流れるようなラインは晴れの日に着るにはぴったりのエレガントさを兼ね備えていた。

靴は高すぎない、ネックストライプのパンプスで、バッグは派手になりすぎない黒のクラッチバッグ。

指先はピンクベージュの淡いネイル。

上から下までピカピカに磨き上げられていることを確認して、ようやく準備が完了した。
< 20 / 237 >

この作品をシェア

pagetop