極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
ツキシマ海運の砦


創業六十年のツキシマ海運は日本経済の中枢ともいえるビジネス街に三十五階建ての本社ビルを構えている。
創設者は貴行の祖父であり、父親同様すでにこの世を去っている。

主に一般消費財を輸送する一般貨物輸送事業や自動車や原油などを輸送する不定期専用船事業、グローバルな拠点間を結ぶネットワークを活用した物流事業を運営する会社である。

従業員数は世界各地に十二万人を数え、安全で高品質な輸送サービスを提供している。

三十五階の役員専用フロアにある社長の執務室では、貴行が秘書の高畠歩美(たかはた あゆみ)とスケジュールの確認中である。


「六月の社長の結婚式なのですが、お取引各社からお祝いはどうしたらいいかとの問い合わせが多数入っております。いかがいたしましょうか」


歩美は切れ長の目を貴行に向け、小首を少しだけ傾けた。

今年三十歳になる歩美は入社してから秘書室に所属し、専任の秘書として仕えるのは貴行が初めてである。
長い黒髪をおだんごにしてまとめ、一重瞼のキリッとした美人なうえ頭もよく切れる。

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