極上御曹司のヘタレな盲愛
全く予想すらしていなかった『頼み事』と不意打ちのキスに、頭が真っ白になり思考停止してしまった私の足にサンダルを履かせ、岩から降ろして「ほら行くぞ」と立たせた大河は、川から引き上げたフルーツの入った袋とスイカのネットを片手で持ち、空いた方の手で私と手を繋ぎ、グイグイ引っ張って私を歩かせバーベキュー場へと戻った。

バーベキュー場に着いて、スイカとフルーツと、茫然自失の私を美波先輩と恵利ちゃんに任せた大河は…。

「ちょっと電話を入れなきゃいけない所があるから」
と言い、どこかに去っていった。

が、それを目にしたらしい営業アシの人達が、先輩と恵利ちゃんが、カットしたフルーツを他の人達に配りに行っている隙をついて、私を囲んで責め立てた。

「なんで、あなたなんかが水島課長と手を繋いでいたの⁉︎」

「しかも!恋人繋ぎって!いったいどういう事よ!」

「『残念な方』のクセに!いい気になってるんじゃないわよ!」

目を吊り上げて怒り狂うお姉様方の声に、ようやく意識が戻ってきた私は…。

「こ…っ!コイビトツナギ…」

とまた真っ白になりかけたが…。

「まさか、付き合ってるとか付き合い始めたなんて事、ないでしょうね!」

鬼気迫る形相で詰め寄られたので、首がもげるかと思う程ぶんぶんと横に振り全力で否定した。

まさか!付き合ってなど絶対にない!
なぜか…なぜか…求婚されただけだ。

そこに美波先輩と恵利ちゃんが走って戻ってきて私は助け出され、早々にコテージに戻ってきたというわけだった。

「全く、あの人達、桃ちゃんが社長の娘さんだっていう事を、忘れてるんじゃないかしら。あんな後先考えられない人達が、仕事ができるとは考えられないわ!水島課長も苦労するわよね」

美波先輩がプリプリ怒っていたが、私はそれどころじゃなかった。

皆んなに見られるのに!コイビトツナギって!
花蓮にだって見られるかもしれないのに!

さっきの謎のプロポーズといい、大河はいったい何を考えているの?と混乱して、眩暈が止まらなかった。


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