昨晩、ひとりで先に寝た私はキスで起こされた。

 だけど温かいお布団と柊吾さんのぬくもりが気持ちよくて目を開けられない。

 十一月の中旬、パリは真冬になっていた。

「うぅん……」
「心春、起きて」

 今日は土曜日。どうして早く起こそうとするの?

「も、ちょっと……」

 柊吾さんの楽しそうな笑い声が眠りに引き込まれていく耳に届く。

「どうし、て……笑う……の……」

 柊吾さんにすり寄る私の頬に温かい唇が触れる。

「心春、ローマへ行こう。十時三十分のフライトに間に合わなくなる」
「えっ!?」

 私の眠気は一気に冷めて、パチッと瞼が開く。

「柊吾さんっ、今なんて言ったの?」
「ローマへ行こう」

 げんきんな私に柊吾さんは口元を緩めて笑いをこらえている。

 私たちが愛し合い結ばれた翌日、彼はローマの美術館へ行こうと約束してくれた。でも柊吾さんは多忙で、なかなか実現できなかった。

 それが今日なの!?

 私はベッドの上にペタンと座り、まだ横になっている柊吾さんへ視線を落とす。

「柊吾さん、起きて!」

 腕を引っ張って起き上がらせようと力を入れるが、逆に彼の胸に倒れ込んでしまう。