独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「きゃあああああ!」

 詩穂はブランケットを頭から被り、ベッドの上で体を丸めた。

「もう最悪! なんてことしてくれたのよぉう! 友達だって信じてたのにぃ……」

 泣きそうになったとき、蓮斗の慌てた声が聞こえてくる。

「待て、待て待て! 俺はなにもしてない!」
「嘘よ……。だって、私、こんな格好だもん……」

 目にじわじわと涙が浮かんできた。蓮斗と再会して、心の中でモヤモヤしていたものを吐き出して、おいしくお酒を飲んだ。きっと立ち直れると思ったのに、またどん底に突き落とされた気分だ。

「お酒の勢いで寝るのだけは、もう絶対にやめようと思ってたのにぃ……」

 弘哉とのことを思い出し、もう終わりだと思った。蓮斗との友情なんて、もう砕け散った。

「だから、落ち着けって! 俺は責められるようなことはなにもしていない! むしろ、やったのは小牧の方だろうが!」
「私がなにをしたって言うのよ……」

 詩穂はブランケットの隙間から目だけを出して、恨めしげに言った。

「昨日、居酒屋を出て『気持ち悪い』って言ったの、覚えてないのか? どうにか小牧のマンションまで連れていったら、おまえ、部屋に入るなりトイレに駆け込んで吐いたじゃないか。そのまま床でぐったりしてるから、汚れた服を脱がせてベッドまで運んだんだ。吐いてすっきりしたのか、おまえはそのまま寝てたけど、心配だったから朝まで付き添ってたんだよ!」
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