俺の、となりにいろ。

仲本桜子の低く冷たい声に、私の肩がビクッと揺れた。
納得いかない私は、顔を上げる。彼女は両腕を組んで上から目線を崩すことなく、ニヤッと薄笑いを浮べた。
そして、私にしか聞こえないくらいの小声で言った。

「桐谷くんが言ってたわよ。「一度気まぐれで寝たくらいで彼女面されるのは困る」って」

「……っ」
何故、秀人に抱かれたことを、あなたが知ってるの?
奈津美にも言っていない私が、他の誰かに言うことはない。

まさか、秀人が仲本桜子に…?

──やっぱ、俺、アンタを愛してる。

そう言ってくれた彼が、まさか。
秀人を信じたいのに、疑うなんてしたくないのに。
目の前が暗くなっていく。
もう、両足に力が入らない。

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