強引に立たされた状態になり、ギリッと握られた腕がかなり痛い。
相手の顔を見上げて、思わず息を飲んだ。


「負けんじゃねぇ」

低いハスキー声で、明らかに怒気のある口調で眉間にシワを寄せて、切れ長の瞳を吊り上げて私を睨んでいる。
仕立ての良さそうなスリーピースを身に纏い、百八十センチ超えのスタイル抜群の秀人の突然の登場に周囲が騒ぎ始め、女性の小さな悲鳴も聞こえた。

当然、私の目の前に立つ仲本桜子も恋する女性に変身して、「上から目線」から「上目遣い目線」へと切り替えた。
「桐谷くん、おかえりなさい。出張はどおでしたか?お疲れ様」
と、労いの言葉をかけていく。