夏の宵と林檎飴【短編集】
keep on loving / episode no.1

「先輩!ぼーっと立ってないで、ほら。行きましょう!」


ぐいぐいと引かれる自分の手を見ても、なんで彼と花火大会に来たのか、なんてことはわからなくて。

ただの後輩だったはずなのに、どうして。
君に惹かれているなんて、誰にもバレたことなかったのに。


.*・゚ .゚・*.


大久保 茉由 (おおくぼ まゆ) 。
それが私の名前。ぴっちぴちの高校3年生。

クラス内での立ち位置はまあまあで、友達も多くもなく少なくもなく。
けれど、私には生まれてこのかた彼氏がいたことがないんだ。


お昼休みをいつも一緒に過ごす唯一の親友である斎藤あずさが、今日のお昼であるキーマカレーをパクパクと食べながら私の彼氏いないいじりをする。
これが日常茶飯事のうちのひとつ。


「茉由はかわいーのになんで彼氏できないんだろうね。高望みしすぎ?」

「そんなことないはずだよ?…わかんないけど。」

男であること。
できれば私より身長が高くて、勉強はできる人の方がいいなあ。

ほら、そんなに理想は高くない。
彼ができない理由は、別のところにある。


「斎藤先輩、また大久保先輩の彼氏の話で遊んでるんですか?だめですよそれ、僕が立候補してるんだから。」


すーっと寄ってきて爆弾を投げ込んだのは、ひとつ下の大山 航 (おおやま わたる) くん。
爆弾といってもこれも日常茶飯事で、毎日投げ込まれるものだから特に気にしていない。

…というのは大嘘で。
実は私が好きなのは大山くんだという特に面白くもない話なのだ。
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