願い婚~幸せであるように~
確かめ合う
マンションに帰り、自分の服や髪の匂いを嗅ぐ。炭火焼の匂いというか油の匂いというか、どこかで食べてきた匂いがする。

さっさと洗い流したい。ブラウスは洗濯出来るけど、スカートはクリーニングに出したい。コンシェルジュで預かってくれるが、着替えてまた下に行くのは面倒。

明日の朝に持っていこうと紙袋に入れて、バスルームへ向かう。今日は長く浸かる気分になれなくて、少し入っただけで出た。

体をバスタオルで巻いた時、突然脱衣室のドアが開いた。


「キャッ!」

「うわっ、ごめん」


開けたのは幸樹さんだったが、すぐにドアは閉められた。私はおそるおそるドアを開けて、顔だけを出す。彼は廊下の壁にもたれて、顔を赤くしていた。


「帰られたんですね。すみません、気付かなくて」

「あ、いや。姿がないから風呂かなと思ったけど、確認しないで開けて悪かった」

「いえ、幸樹さんもすぐに入ります? ちょっと待っていてくださいね」


珍しく動揺する幸樹さんに私まで顔が赤くなった。裸でなかったからまだましだけど、この姿は恥ずかしい。急いでパジャマを着てからリビングへ行く。

ネクタイとシャツの一番上のボタンを外した幸樹さんは、ダイニングの椅子に座って、透明なものをグラスに入れて飲んでいた。
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