「ねぇ、シェアしない?」


三浦明美が死んだ。


学校の屋上から飛び降りて、死んだ。


明美の手を離してしまった瞬間、息を飲んで身を引いたけど__私の背中に覆いかぶさっている舞香がぐっと力を込める。


「ちゃんと最後まで見ないと」と。


地面に弾ける明美を、私は瞬きもしないで見つめていた。


そしてその時、やっと分かったんだ。


舞香が、狂っていることに。


ようやく体の重石が取れると、その場に座り込む私の手を、舞香が強引に引っ張った。


「見られないうちに逃げないと」


『逃げる』というワードに反応した私は、なんとか腰を浮かせる。


舞香に手を引かれ、階段を駆け下り__。


「これで、邪魔者はいなくなったわね」


「えっ__?」


「やっぱりシェアは2人じゃないと」


ね?と振り返る舞香に、返す言葉もない。


ただ一刻も早く、この女から離れないといけない。


私のことを守ってくれた舞香は、とても頼もしい味方だった。


でも、味方が敵になった時、それが最も恐ろしいんじゃないか?


舞香は目の前に立ちはだかる邪魔者を、容赦なく排除する。そのことは、私が1番よく見てきた。


この女は危険だ。


関わり合いになっちゃいけない。


教室に戻るとすでに騒ぎになっていたけど、私は素知らぬ顔で1日を過ごした。


絶対に、舞香とは目を合わさないまま__。


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