私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
第一章・美章国
「うっ……」
 耳が痛い。頭がクラクラする……。
「うう……」
 呻きながら、うつ伏せになっていた体を起こす。
(すごく体が重い。まるで誰かに乗っかられてるみたい)
 ずるっと体の上から、何かが滑り落ちる気配がした。
「え? ――クロちゃん?」
 振り返ると、私に覆いかぶさるようにクロちゃんが倒れている。
 ……本当に乗っかられてた。
「おいしょ!」
 私はクロちゃんから抜け出して、体を揺する。クロちゃんはフードを深く被ったままぐったりとしていた。

「ちょっと、大丈夫?」
 ぴくりともしない。
 不安になってきて、軽く揺すっていた手に力が入った。
「ねえ、クロちゃん! 起きて!」
「うう……」
 思い切り揺すると、クロちゃんが呻いた。私はほっと息を着く。
 とりあえず、大丈夫そうだ。
「う……ん」
 クロちゃんが唸りながら、瞳を開けた。
「あ、れ?」
 乾いた声を出して、ゆっくりと起き上がる。私はクロちゃんを見据えた。
「大丈夫?」
「……うん。キミは?」
「ちょっとだけ耳が痛いけど、大丈夫」
「そっか」

 頭のふらつきはもう消えていた。
 少しだけ耳鳴りのような、閉塞感のようなものがあって、耳は若干痛む。でも起き抜けよりは大分良い。
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