間宮さんのニセ花嫁【完】
結婚へのステップ3

全てをなかったことにしますか?




『尽きましてはこちらの書類に署名してください。そうしたら千景を跡取りにすることを認めましょう』


梅子さんに差し出された婚姻届を前に私と間宮さんの頰に汗がダラリと垂れた。
元々籍は入れないという契約だったので婚姻届を書く予定はなかったのだが、まさかこんなところで要求されることになるとは。

それにここに名前を書かないと間宮さんが跡継ぎに認められないと言う。


「ばあちゃん、これは後で俺たちが二人で書くから」

「ここで書いても変わらないでしょう。それとも、私の前で書けない理由でもあるのですか?」

「っ……」


梅子さん、もしかして勘付いているんだろうか。私と間宮さんが好き合ってではなく、それぞれの利害の一致から偽装結婚をしようとしていることに。
それを試すためにわざわざ自分の目の前で婚姻届を書かせようとしている?

書く以外の手は見つかりそうにないが、それだと契約違反になる。
チラリと隣を確認すると間宮さんも思ってもみなかった展開なのか、表情に焦りが見えた。


「あのさ、伝えるのが遅くなったけど俺たち籍はまだ入れないでおこうと思うんだ」

「それは何故?」

「元々事実婚で進めようと思っていた。うちの事情で結婚を早めてしまったし、それに俺は会社を辞めるだろうけど飛鳥はまだ続けるから苗字が変わると仕事をやりにくくなるだろう」


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