その晩、エリナは『青弓亭』店長の帰宅によって、もしかすると仕事を失うかもしれないという心配で眠れぬ夜を過ごした……のかと思いきや、素晴らしくモフモフしたフェンリルの尻尾に包まれたら、悩みなどすべて吹っ飛んでしまった。

(ああこれは、人がダメになる尻尾だ!)

 なにを失ってもモフモフがあれば生きていける。
 それが真のモフモフスキーなのである。

 自分の尻尾の中でぬくぬくと温まり、「むふん」と幸せそうな顔で眠るエリナを見てルディは思う。

(この子猫には料理の才能がある。エリナは人を笑顔にする料理が作ることができるのだから、それを伸ばしてやりたい。青弓亭』のような小さな店に料理人は3人も要らない。となると、店を一軒持たせるしかないか? いや、まだ店を持つには小さすぎるから、その場合はしっかりした大人が共同経営する必要がある。ミメットを引き抜くか? ギギリクが戻ってきたことは、王家の者の耳にすぐに入るだろう。となると、エリナの料理を食べたがる王族のわがままで、王宮の厨房に閉じ込められてしまいそうなのが心配だな……)

 孤高の妖精獣フェンリルの心の中は、心配性のお父さんであった。