身代わり王女の禁断の恋
ハールの思い
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ハールの思い

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俺の母は、王宮で下働きをしていた。

王族に直接関わる侍女たちには、下級貴族の娘たちもいるが、下働きは、裕福な商人の娘が多い。

俺の母も多分に漏れず、商家の出だった。

王宮勤めをして、より良い縁談を纏めるための布石にする…はずだった。


その日、たまたま森の手入れに来ていた木こりに、母は差し入れの茶菓子を届けに行った。

庭園を抜けて、森へ向かう母の前に現れたのは、すでに五十過ぎとなっていた前国王だった。

10年前に王妃を亡くした国王に、まだ18歳だった母は見初められた。

人はそれを幸運だと言うが、本当に母は幸せだったのだろうか。

三十以上、歳の離れた男と無理矢理結婚させられたにも拘らず、国王をたぶらかしたかのような陰口を叩かれ、王宮内で肩身の狭い思いをして暮らす。

それは、女として、本当に幸せだったんだろうか。

俺は、今でも疑問に思っている。

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