冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
第八章
朝食を終え、支配人との挨拶も早々に熱海のホテルをチェックアウトした後、私たちは東京へ向かった。

会議がうまくいけば安西部長とデートだ。どんなデートになるのか想像するだけでもドキドキする。けれど、高速道路に入る手前でそんな浮かれた気分が一気に打ち砕かれるような事が起こった。

「参ったな、いつもこんなところで混雑しないんだが……車、全然動かねぇな」

「事故ですかね?」

海沿いの国道を走っていると、どうやら事故渋滞に巻き込まれてしまったようだ。車はとろとろと動いては止まりを繰り返している。

「くそ……」

ホテルを出てもう一時間は経っている。急いでいるときに限ってこういうことが起きるのだ。右手の人差し指でハンドルをトントンとしている安西部長の横顔にも焦りと苛立ちが窺える。

腕時計で時間を確認すると、時刻は十時になるところだった。
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