あなどれないね、世唯くん。
隠して、内緒で。



「糸羽おはよ〜」

朝、教室に着くと寿々が何やら浮かない顔をしてわたしの席にやってきた。


「あ、寿々おはよ」

「聞いてよー、今日席替えあるんだってさ」

「席替え?」


そういえば1学期は6月に席替えをして以来していなかったっけ。


「ちょうど夏休み明けた今のタイミングでやるんだってさ。たなっちがさっき言ってたんだよね」

"たなっち"とはわたしたちの担任の先生である、棚井先生のこと。

みんな親しみやすいからって、たなっちって呼んでる。


「へぇ、そっか」

「えー、糸羽反応薄くない?」

「だって席替えとかそんな興味ないし」

正直どこの席でもいいなぁと思う。
まあ、教卓の前とかは嫌だけど。


「ったく、そんなこと言っていいの?
糸羽の愛しの千景くんと隣になれるチャンスなのにさ?」

「……だって万が一、世唯くんと隣になっても世唯くん授業サボる癖あるし」

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