きみのための星になりたい。
第1章 変わらない日常と変わった日常

四月上旬。とはいえ、あと数日もすれば四月も中旬になる。

今年も、もうすぐ緑が芽生え輝く時期だ。

高校へ向かう途中の歩道の傍らに、連続して聳え立つ何本かの桜の木。身にまとうように枝に付いていた薄桃色の花びらはもう半分ほど散ってしまい、新緑の葉が姿を現し始めている。

今春、高校二年生に進級した私、吉末凪(よしずえなぎ)の通う高校は、自分でいうのもあれだが、県内でも有数の進学校だ。

なぜ今の高校を選んだのかと言われたら、恐らく一番の理由は家から徒歩で通える距離だから。私の家から高校までは、歩いて約十分のところに位置している。

もちろん近いことだけが理由ではない。私が通う高校は、私の中学からの友人ももともと志望していた学校だった。幼い頃から友達作りがあまり得意ではなかった私は、自分とは真反対なほど社交的な友人がこの高校を目指していることを知り、それならば私もと志望したんだ。

進学校であることから、とても倍率は高く、友人とふたりでかなり勉強をしたと思う。毎日学習を積み重ね、晴れて勝ち取った合格。

そんな私たちも無事一年間を終え、昨日二年生の始業式があった。

「凪」

肩にポンと手を乗せられ、私は後ろを振り向く。そこには受験を共に乗り越えた私の友人、──あかりがにこっと笑って立っていた。

「あかり、おはよう」
「凪もおはよう。今日からもう授業始まるんだよね。ああ、信じられない」
「うちは進学校だもんね。きっと授業開始初日からたくさんの課題が出るんだろうなあ」

ふたりしてそんなことを考えながら肩を落とす。

進学校へ通っているといえば、大抵の人は「ええ、じゃあ勉強ばかりしているんだ」と口を揃えて言うけれど、私たちだって勉強だけをしているわけではない。

毎日コツコツとこなしても終わりが一向に見えない課題だったり、範囲が広すぎてどこから手をつけていいのか分からないテストだったり。

そういったものに悩み、もういいや、と全て放棄してしまいたくなることだってある。それでも、この一年間、あかりやクラスメイトと励ましあいながら何とかやってきたのだ。

「……二年生でも、よろしくね」

あかりが目尻を下げながら優しい笑顔を見せた。だから私もにこりと笑うと、「……もちろんだよ。こちらこそ、よろしくね」とあかりに告げる。

それからは他愛ない話をお互いにしながら、ふたり高校へ向かう足取りを速めた。
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