きみのための星になりたい。

中学に入ってからは彼女たちからの暴言はなくなったものの、自分の意見を口にすることができなくなった私。私の通う中学は友達と協力する、いわゆるグループワークというものが多く、意見を求められることが多々あった。けれど、過去のこともありなかなか意見を発信できずにいるものだから、周りは『吉末さんはどう思ってるの?』と少しイライラを見せ始める。

その緊迫感やイライラが私にもビンビン伝わってきて、余計に私は唇を震わせ、何も言えなくなる。……ただの、悪循環。

でも、私は出会った。あかりという、たった一人の心優しい女の子に。あかりは他の女子たちとは違い、私が話しやすいように雰囲気を作ってくれる。それでも話せない時は自分から話を振ってくれ、『凪はこっちとこっち、どっちの意見がいいと思う?』と私が答えやすいようにしてくれる。

そんなあかりだから、私も本当に少しだけ心を開くことができた。それにあかりも、なぜか私とずっと一緒にいてくれる。 だからこうして今も、あかりと仲良くさせてもらっている。

「……ふぅ」

……こうして、窓を開け空を見上げるのは、私の癖だ。過去を思い出すとき、そして自分の弱さを実感するとき、決まって私は夜空を見上げる。

どうして私は、こんなにも弱いのか。つらい過去のひとつやふたつ、誰もがきっと持っている。でも私は未だそれをズルズルと引きずっていて、自分の思いを表現するのが苦手になった。

ただ周りを刺激しないように合わせて笑い、自分を守る日々。

言いたいことが喉に引っかかって何一つ言えず、もやもやとした気持ちと、情けなさと、諦めと。……それらが私を支配し、どんどん自分のことを嫌ってしまいそうだ。

いつも一緒にいてくれるあかりにだって、過去のことは話せていないし、あかりは今も私が話しやすいように色々気を遣ってくれている。

……本当に、情けない。きっと私は、あかりの友達失格かもしれないなあ。

そんなことをぼんやりと考えながら、視線を下に落とし窓枠を人差し指でなぞる。そしてもう一度夜空を仰ぐと、そっと頰を緩め微笑んでみた。

今日みたいに気持ちの収集がつかなくなり、どうにもならなくなったときに、何でもないことのように笑うのは得意だ。

私がこの暗く奥深い空を見上げる理由があるとすれば、ただひとつ。暗闇の中に浮かぶ星々が、自分を照らし、少しだけ寄り添ってくれるような気がするから。

……それなのに、どうして。こんなにもこんなにも、苦しいのか。

星々を見ていても、私の心の中にある溝は埋まることはないし、つけられた傷も完全には癒えることはない。

静かに涙を流す私は、きつく唇を噛みしめる。

その雫は窓枠にぽたりと垂れ、小さな水溜りを作った。

「……っ」

涙を拭うこともせず、ただぼんやりと星屑を見つめるだけの私。この限りなく広い終わりのなさそうな世界の夜空に輝く星々は、こんな私を見てどう思うのだろう。

いつまで経っても過去を振り切って前に進めない私は、かなりの臆病者なのかもしれない。

そう思いながら、私は暗闇にも似た夜の世界の片隅で、止まることを知らない涙を流し続けた。
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