きみのための星になりたい。
第3章 自分の正解を探してもがく日々


ひとりで夜空を見上げ、過去を思い出し、自分の弱さに涙したあの日から約一ヶ月。

病院へ入院していた蓮は、治療の甲斐あり、入院から数日で自宅へ戻ってくることができた。ここ最近は風邪を引くこともなく、元気に毎日を過ごしている。

私はといえば、今も変わらず自分の思っていることを言えないまま。昨日も現代文の授業の中で六人で行うグループワークがあったが、私はみんながいいなという意見に「私もそれがいいと思う」と同調して愛想笑いを浮かべることしかできなかった。

自分の不甲斐なさが、心の底から恨めしい。

「──吉末。吉末?」

「……あ、はい」

途端に名前を呼ばれ、肩をビクリと跳ねさせる。色々なことを考えているうちに別の世界へ意識を飛ばしてしまったようで、急に現実に引き戻された私。

私の前にはこちらを振り返り、心配そうな顔をする柊斗と悪戯に笑う悠真くんがいて、今は塾の授業中だったのだと気付く。

「凪、大丈夫?」

隣に座っていたあかりも、らしくない私を心配してくれたのか、怪訝な顔をして私をちらりと見つめた。今は、本当にただボーッとしていただけ。だから心配はいらないよとあかりに伝わるように、ゆっくりと頰を緩める。

百二十分の授業が全て終わった後、絶対に何か言われるだろうなあと思っていたら、私の予想通り悠真くんがこちらを振り向いた。

「凪ちゃん、珍しくボーッとしてたじゃん。大丈夫?体調悪いのか?」

シャープペンシルを筆箱に片付けながら首を傾げた悠真くんに、小さく首を横に振る。

「ううん、問題全部解き終わってボーッとしてたら、知らない間に違う世界へ旅立ってたみたい」

本当になんともないんだと言いたげに、冗談交じりに伝えると、悠真くんと柊斗が「それならいいんだけど」とクスリと笑う。

「それじゃ、帰ろうか」

あかりの一言で全員が残っていた片付けをちゃっちゃと終わらせると、そそくさと教室を後にした。

「じゃあ、俺これから友達の家に向かうから。柊斗ともここでお別れだな」
「そっか、悠真、今日は友達の家に泊まりって言ってたね。だからそんな大きいリュック背負ってんのね」

塾の前で帰り際の立ち話をする私たち。悠真くんは今日、明日が土曜日のこともあり友達の家に泊まらせてもらうみたいで、電車は使わないらしい。だから柊斗は今日一人で電車に乗り帰るということになる。

「じゃ、俺友達待たせてるからもう行くわ。またな」
「うん、またね」

去っていく悠真くんに手を振りながら、私たちもそろそろ帰ろうと互いの家路に足を向ける。でもその時、「……え?」と、小さな声で柊斗が呟いた。



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