きみのための星になりたい。



「どうしたの?」

あかりが問いかければ、柊斗は「いや……」と言葉を濁す。けれどそれからすぐ、柊斗は自分が見ていたスマートフォンの画面を私たちに向けた。

「母さんから……」

そこには、柊斗のお母さんからのメッセージ。

《帰りに乗る電車に、人身事故の影響で遅れや見合わせが出ているらしいんだけど、大丈夫?帰ってこれる?よかったら、お母さん、迎えにいこうか?》

その文を見て、驚く。人身事故があっただなんて知らなかったから、私は目を丸く見開いた。

「柊斗くん、お母さんの迎え呼んだほうがいいんじゃない?どのくらいで迎えに来れるの?」
「うん。さっき遅延情報もさっと調べたけど、まだ復旧の目処は立っていないみたい。大人しく迎えを待つことにするよ。多分混んでなければ、四十分ほどでこられると思う」

あかりの言葉にそう返した柊斗は、お母さんに早速迎えを頼む連絡をしているようだ。

でも、四十分って……かなり長い間柊斗は一人で迎えを待つことになる。もしよかったら、私も一緒に待っていようか。……そう思ったものの、逆にそれが迷惑になるかもしれないと考えてしまい、言いかけた言葉は喉に引っかかった。その時。

「もし凪がよかったら、柊斗くんの迎えが来るまで一緒にいてあげたらどうかな?四十分って長いし。私も本当は一緒に待ちたいんだけど、今お母さん手を怪我してて……色々手伝わなくちゃいけなくて。凪も用事があるなら、仕方ないと思うんだけど」

あかりから、まさに私が言おうとしていたことの提案が飛び出した。私はそれに小さく頷くと、「全然一緒に待つよ」と付け加える。

途端、申し訳なさそうな顔で慌てる柊斗が目に入ったけれど、私は全然気にしていないし、むしろ私が柊斗を置いて帰れない。だって、四十分も一人で待つのは暇だと思うから。

「柊斗が何かやることとか、一人でいたいとかだったら、帰るけど……」

押し付けになってもいけないなあと思った私は、柊斗にやんわりと選択肢を持ちかける。そしたら柊斗は一旦考え込んだ後、「本当に申し訳ないんだけど、少しだけ話し相手になってもらってもいいかな」と眉を下げた。私はそれにコクリと頷く。

じゃあまたね、とあかりと挨拶を交わした後は、お母さんに帰るのが遅れるという内容のメッセージを打ち、私は柊斗と目と鼻の先にある駅を目指す。構内は電車に乗れない人で溢れかえっていたけれど、なんとか人二人分が座れそうなスペースを見つけたので、そこに二人で腰掛けた。

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