死者の涙〜最期のメッセージ〜
ディメンジャー
早速、施設側に連絡を取り藍と大河は隣町の介護老人保健施設に向かった。三階建ての建物だ。

「本日は、よろしくお願いします」

藍はぺこりと頭を下げる。大河も同じく頭を下げた。

「……来ていただき、ありがとうございます」

大野和美と同じ年頃の女性が微笑む。その目の下には隈ができていた。

「三郎さんの脱走と死亡事故のことで、今はかなり忙しい状況なんです。でも、三郎さんを殺した犯人が見つからならと……」

そう言いながら、職員は施設の中を案内する。一階はデイサービスとリハビリ室、二階と三階が入所している人の生活空間だそうだ。

「三郎さんは、三階に入所していました。三階は二階よりも認知症などが重い人が入所しています」

三階の食堂などでは、利用者がテレビを見たり、新聞を読んだり、お喋りをしていたりと自由に過ごしている。

「認知症は、脳細胞の死滅や活動の低下によって認知機能に障害が起き、日常生活や社会生活が困難になる状態の総称です。物忘れだけでなく、理解力や判断力の低下なども現れます」
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