その言葉から、拓海が以前から日菜子を気に掛けていたことがわかった美穂は、それまでの警戒心をわずかに緩ませた。

「日菜子がああいうふうに自分を見せなくなったのには、ちゃんとした理由があるの」

「親友の君は、それでいいと思っているわけ?」

 美穂は鋭い指摘に奥歯を噛みしめて、首を振った。

「南沢さん……でしたよね? 日菜子に関わるつもりなら中途半端はやめてください。うわっつらだけの優しさは、日菜子が一番傷つくから」

 過去に何かあったのだと、拓海は察した。

「町田さんは、俺の味方になってくれるってこと?」

 美穂も日菜子が無理をしていることを気に掛けている。拓海はそれならば協力してもらおうと考えたのだ。

「わたしは、日菜子だけの味方です。だけど、南沢さんが〝本当に〟日菜子のことを思っているなら、あなたに手を貸すかもしれません」

 試すような視線を向けてきた美穂に、拓海は笑った。

「まあ、見てて。俺逃がすつもりないから」

 自信満々のその姿に、呆れた美穂が笑いを漏らす。

「その自信、日菜子に少し分けてもらえませんか?」

「ああ、そうするつもりだ。まずは低すぎる自己評価をどうにかしないとな」

 再び笑った拓海を見た美穂がそっとつぶやいた。

「やっかいな相手につかまったみたいですね。日菜子ってばご愁傷様」

「まあ、そう言わないで。感謝する日がくるはずだから」

「日菜子、ここに毎日駆け込んできそうだけど」

「ああ、それは大丈夫。俺がちゃんとつかまえておくから」

 呆れた顔の美穂に、日菜子の分まで支払いを終えた拓海が言った。

「そろそろあいつ、あの眼鏡卒業してもいいころだろ?」

 自信満々にそう言った彼に、美穂はうなずいた。