願いを込めて
バンパイアの子供
10月31日。



ハロウィンは、私達にとっては1年のうちで最も素の姿を恐れずに見せられる日。




「ハッピーハロウィンだ!」



「お菓子欲しい!」



「ねえ、お姉さん凄い格好良いね!バンパイアの格好してるの?」




とある大学病院の、5階。



私ー朝日奈 さくら(あさひな さくら)ーは、隣の小児病棟から楽しそうに声を掛けてくる子供達に笑顔をー尖った八重歯を見せながらー向け、503号室へと向かった。



歩く度に私の身に付けたマントが床に触れ、いかにもハロウィンらしさを醸し出している。




そう。



私の今日の仮装はバンパイア………ではなく、私はバンパイアの末裔なのである。



物心着いた時から、海外育ちのバンパイアの子孫の父と日本育ちのバンパイアの子孫の母は、いつも美味しそうにワイン替わりに人の血を飲んでいた。



もちろん、動物の血も抵抗なく飲んでいた。



私の父は医師としてある病院に務めていて、私の母は看護師として父と同じ病院に務めている。



普段は人間らしさ満載の2人だけれど、たまに使用されなかった患者さん用の輸血パックを持ち帰ってきたり、事故等で運び込まれる患者さんの床に飛び散った血を、誰も見ていなかったら飲んだりしているらしい。



前者はまだ良いとして、後者は娘の私でも引いてしまう。
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