彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
壮行会
とうとう県予選1回戦の日が来てしまった。

来てしまった、というのは、今日のこの日まで沙和と話すことなく来てしまったという意味だ。

他の部員が彼女からミサンガやお守りを貰ってくる中、俺だけ何も受け取ってないままだった。

「前日の夜とかにくれるんじゃない?」

荒木までもが気を使った口調で言ってくれたけど、前日の夜も会うことすらなくあっさりと虚しく過ぎた。

みんなが足首やバッグにつけてるのが眩しくも見える。

「いや、冷静に見るとダサくないか?ない方がマシだろ。」と強がる自分もいるのが情けない。

俺だって、沙和から何か欲しかった。

欲しかったのに、この日がとうとう来てしまった。

今日は朝、体育館で壮行会をした後、学校が準備したバスに乗って試合会場まで移動することになる。

学校には戻ってこない。

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