死者の舞踏〜最期のメッセージ〜
如月刑事の声はどこか嬉しそうで、藍は「何かあったの?」と訊ねる。事件が大きく進展でもしたのだろうか。

「いや、特に進展はしていない。でも今はとても幸せな気持ちなんだ」

「そうなの……」

藍の頭に如月刑事の顔が浮かぶ。彼は今、どんな表情で話しているのだろうか。

「それで、どうしたの?また解剖の依頼?」

ただ雑談をするために如月刑事は電話などかけてこない。話が進みそうになかったので藍は訊ねた。午後からも解剖が入っている。お昼ご飯をしっかり食べて解剖に望まなくてはならない。

「あ〜……えっとだな……お前、今日の夜は空いているか?」

「夜?別に空いているけど……」

「実は、同僚の女が「彼氏と行く予定だったけど行けなくなった」と言ってバレエ公演のチケットをくれたんだ。一緒に行かないか?」

どこか緊張したような声で如月刑事は訊ねる。藍は少し考え、「仕事帰りになるかもしれないけど、いいかしら?」と訊ねる。仕事帰りなのでおしゃれな格好とは言えないかもしれない。
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