――ない。どうして。どこにもないっ。
もしかしたら掃除をしているアルマがどこかに片付けたかもしれないと思いついて、下女中たちが居住する棟へ行こうとドアを開けて廊下へ出る。
「メグミさん。血相変えてどうしました」
箒を持ったアルマがこちらへ歩いてくるところだった。メグミは走り寄って彼女の目の前に立つと勢い込んで尋ねる。
「絵が描いてあった板は? 触らないでほしいと頼んだあれを、どこかへ持って行ったの?」
「あぁ、あれですか。申し訳ないのですが、掃除をしている間に汚してしまいまして。これは捨てた方がいいと思ったんです」
「捨てた……っ!」
個人の持ち物だとはっきりしているのに勝手に捨てるのは、アルマの仕事では違反事項だろうに、当たり前のように言いのけた。
メグミは激しく動揺してさらに訊く。
「どこに。どこに捨てたの?」
「ゴミとして焼却場に」
息を詰めてアルマを凝視する。感情の高ぶりでみるみる両目に雫が溜まった。