【放浪恋愛】アリョーナの旅路~ソッフィオーネを鳴らすまで
第10話
アタシは、ボブさんと離婚をすることを決意して、ボブさんの家からボストンバックと赤茶色のバッグを持って飛び出した後、ダウンタウンへ逃げ行きました。

アタシはパーク通りの教会の近くにあるアパートへ移ったあと、ボブさんと離婚調停を起こす準備を始めていました。

アタシは、ボブさんの家から逃げ出したのと同時に郵便局の仕事もやめました。

郵便局の仕事をやめたアタシは、クインシーマーケットのフードコートの中にあるハンバーガーショップでバイトを始めました。

夜のバイトは、コンビニが地下鉄の駅に近い場所にあるので、引き続き夜のバイトを続けることにした…

バイトは、1日四時間ずつに減らしたのでお給料は極力減っていた…

郵便局で働いていた時は、月給が1200ドルであった…

コンビニでバイトをしていた時のお給料800ドルと合わせて2000ドルとなっていた…

郵便局をやめて、ハンバーガーショップに再就職をした後は時給が9ドル15セントで四時間働いて日当が36ドル60セント、コンビニのバイトを四時間に減らしたので、1日の合計は73ドル80セントであった…

お給料が極力減ったので、苦しい生活を余儀なくされていた…

アタシは、どうしてボブさんと離婚をしたのだろうか…

どうしてアタシは、ボブさんの家とアツレキを作ってしまったのか…

ボブさんが年収10万ドルでマサチューセッツ州の州庁の職員だと言うことはタテマエで、本音はお見合いをことわられるのがイヤだからウソの履歴を作っていた…

フライグブルグ(ドイツ)で最初に結婚をしたヒーラーさんと同じタイプのダメ男だとアタシは思う…

あいつがシューカツをすると言っていたのはタテマエで、ホンネはアタシのヒモになることしか頭になかった…

だから、大ゲンカの末に離婚をしてフランスへ逃げこんだ…

そんな苦い思い出があったから、ボブさんをダメ男だとみている…

フランスへ逃げ込んだ後に再婚をしたフィリップさんも、どうしようもない大ウソつきだったわ…

アタシはフィリップさんの家の親族たちとの間でヒンパンにもめ事を起こしていた…

そのまた上に、フィリップさんの浮気相手の女ふたりとも血みどろの大ゲンカを起こしてしまった…

そうしたトラウマの発端が、2011年の7月にハバロフスクの実家の両親が決めたお見合い相手との挙式披露宴の前夜にガラの悪い男たちから集団でレイプされた事件であった…

アタシのトラウマは、レイプ事件できついはずかしめを受けた…いえ、そのまた以前から始まっていたような気がするわ…

アタシの結婚生活が長続きできなかった原因は…

他にもまだ思い当たるフシがあるかもしれない…

しかし、いくら考えてみても思い当たるフシはなかなか見つかない…

ダメ…

思い出せない…

どうしよう…

アタシは、毎日そうしたジレンマに苦しみ続けていた…

そんなアタシに、もう一度ウェディングベルを鳴らす日はやって来るのだろうか?

アタシは、何のために渡米したのだろうか?

ハバロフスクの実家から突然逃げ出した後、シベリア鉄道に乗ってモスクワへ逃げて、その後サンクトペテルブルグからドイツ・フランスと転んだあげくにアメリカへやって来た…

けれど、アタシは幸せを見つけるために渡米したのではないのか?

アタシは、悲しくなったのでくすんくすんと泣いていた…

7月6日のことであった…

アタシは、一定の金額が貯まって、気持ちが落ち着いたら、時給が一番高い西海岸の州へ移住をすることを決意した…

アタシとボブさんとの仲は険悪になっていたので、もはや修復不能となっていた…

これ以上、ボストンにいたくない…

ボストンから早く出たい…

今のアタシの気持ちは、ボブさんと顔を合わせたくないと言う気持ちが強くなっていたので、アタシはますますかたくなになっていた…

7月7日のことであった…

ボブさんのいとこさんとカノジョの結婚式がビーコンヒルの中心部の小さな教会で行われました。

チャペルには、大学の友人知人たちがたくさん出席をして、ふたりの門出を祝っていた…

本来ならば、大学の卒業式の翌日に挙式披露宴を挙げる予定であったけど、いとこさんの家のお父さまが大病で倒れたので、お父さまの介護をするために急きょフィラデルフィアへ帰ることになっていた…

いとこさんのカノジョは、ふたりきりで暮らしたいことを希望していたけど、お父さまの介護はイヤと言うたので、ボストンに残ることになってしまった…

ふたりは、フィラデルフィアとボストンで離ればなれの暮らしになってしまう…

ボブさんのいとこさんは、お父さまが大病で倒れた知らせを聞いた時、すごく悩んでいた…

大学卒業間際の頃に父親が大病で倒れた知らせを聞いたので、卒業まで在学をするのか1~2年間休学して父親の介護をするのかのどちらかを選ばないといけなかった…

こんな時に父親が大病になるなんて…

ボブさんのイトコさんは、ものすごく残念な表情をしていた…

いとこさんのカノジョも、せっかく夢にまで見たスイートホーム暮らしが台無しになったので、カレとの結婚をやめて、ちがう男に乗りかえようかと思っていた…

ボブさんのいとこさんとカノジョの結婚式が行われた日の夜のことであった…

アタシがバイトをしているコンビニに、ボブさんのいとこさんのカノジョがやって来た…

カノジョはアタシに『カレと結婚なんかするのじゃなかった。』と泣きながら言うていた…

アタシは、陳列ケースに新しく来たサンドイッチをならべる仕事をしていた…

アタシは、ボブさんと離婚をすることを決めていたので、アタシの気持ちはますますかたくなになっていた…

ボブさんのいとこさんのカノジョが泣きそうな声でカレと結婚をするのじゃなかったと言うたので、アタシは怒った口調でカノジョに言うた…

「あんたね!!やっぱりカレと結婚なんかするのじゃなかったと言うけど、何でふたりはお付き合いをしていたのかしらね!!あんたも結局アタシと同じように結婚相手を間違えてしまったから大失敗を被ってしまったのよ!!今ごろになってことの重大性に気がついたのかしら!!遅いわよ!!アタシは今、バイトで忙しいのだから、あんたの泣き言なんか聞いているひまなんか1分もないのよ!!」

ボブさんのいとこさんのカノジョは、泣きそうな声でアタシにいうていた…

「アリョーナさん、アリョーナさんもボブさんと一体何があったのですか?アリョーナさんはボブさんと大ゲンカの末に家を飛び出したあと、どうしたいのですか?」
「アタシは結婚相手を間違えてしまったから後悔しているのよ!!ボブさんは、アタシの身丈に合わない人なのよ!!アタシはボブさんが望んでいる花嫁さんじゃないから離婚するのよ!!理由はそれだけよ!!」
「アリョーナさん…アリョーナさんは、それでいいと思っているのですか?ボブさんはひどく傷ついているのよ。」
「あんたはどこのどこまでクルクルパーなのかしらねぇ…人の心配ばかりをしているヒマがあるのなら、自分自身の今後のことを心配しなさいよ!!」
「アリョーナさん、クルクルパーは言い過ぎですわ。」
「悪かったわね!!口の悪い女で悪かったわね!!…ボブさんはアタシに大ウソをついたのアタシはボブさんを一生うらみ通して行くから!!」
「アリョーナさん…」
「あんたね!!カレと離ればなれになるのがイヤだったら、ちがう男に乗りかえなさいよ!!」
「アリョーナさん…アタシにカレと別れろと言うのですか!?」
「ええ、その通りよ!!あんたはまだ先があるのだから、男なんてまだたくさんいるわよ!!アタシは男なんか大きらいだから…アタシはね!!今回をふくめて3度も結婚をしたけど、大失敗したから後悔しているのよ!!」
「3度も大失敗をしたって?」

アタシは、ボブさんのいとこさんのカノジョにつらそうな声で言うた…

「あのね!!アタシはショージキ言ってしんどいのよ…こんなことになるのだったら…お見合いなんか…しない方がよかったと思っているのよ…だから…ものすごく後悔しているのよ!!」
「アリョーナさん。」
「これで分かったでしょ!!あのね!!アタシは今バイト中で忙しいのよ!!あんたも大学に行っているのなら、働きながら学ぶと言うことはできないのかしら!?自分のおこづかいを自分で稼ぐと言うことができないままでいいと思っているのかしら!?アタシは女子大をやめてから今まで世界中を転々として生きてきたやさぐれた女なのよ!!あんたは、やさぐれ女のアタシのつらさ悲しさなんかは分からない世間知らずの小娘なのよ!!帰んなさいよ!!これ以上バイトのジャマをするのだったら店長を呼ぶわよ!!」

アタシはいとこさんのカノジョにこう言った後、奥の部屋へ逃げて行った…

7月10日のことであった…

アタシが暮らしているダウンタウンのパーク通りの教会の近くにあるアパートに、かつて下宿をしていた時にお世話になっていたインテリア家具屋さんのおかみさんが、アタシの元にやって来ました。

アタシはおかみさんに、ボブさんの家と大ゲンカを起こして気まずくなっていることを話しました。

おかみさんは、アタシがボブさんと離婚をしたことを聞いたので、とても残念な表情でアタシに言うた…

「結局、大ゲンカになった末にまた離婚をしたのね…もう、困ったわね…アリョーナちゃんはどうして嫁ぎ先で大ゲンカばかりを繰り返していたのかしら?」
「どうしてって…ボブさんがアタシに大ウソをついたのよ…離婚の理由はただそれだけ…」
「ボブさんが、アリョーナちゃんにウソをついたって?」
「本当にウソをつかれたのよ!!」

アタシはおかみさんにチャイ(紅茶)を差し出した後、冷蔵庫のドアを開けて冷蔵庫の中からバドワイザーの500ミリリットル缶を取り出して、フタをプシュッとあけながらこう言うた…

「アタシね…ボブさんが年収10万ドルでマサチューセッツ州の州庁の職員だと言うことを信じてお見合いをしたのよ…だけど、ボブさんはお見合いをことわられることがイヤだから、あんなウソをついていた…だから、アタシはだまされたのよ…ボブさんのお母さまもお母さまよ…ボブさんにお嫁さんが来なくなってしまったらどうしようと思って…アレコレと小細工していた…きたないわよまったく…だからアタシは、あいつらを許さないと怒っているのよ!!」

アタシは、缶ビールをゴクゴクとのんでからおかみさんにこう言いました。

「おかみさん、アタシね…ショージキ言ってね、しんどいのよ…何のためにアタシは結婚をしていたのだろうか?嫁ぎ先の家で大ゲンカばかりを繰り返して…アタシにふさわしい結婚相手は…もういないのよ…アタシはね!!男なんて大きらいなのよ!!男なんかもういらないわ!!」
「アリョーナちゃん、アリョーナちゃんはボブさんが年収10万ドルで州庁の職員だと言うウソをついていたと言うたわね。」
「ボブさんは、ほんとうにウソをついたのよ!!」
「ボブさんのお母さまに、そのことを聞いてみたけど…ボブさんは、本当にマサチューセッツ州の州庁の職員なのよ。」
「信用できないわよ!!」
「どうしてそんなにイコジになっているのよ…ボブさんはほんとうにマサチューセッツ州の州庁の職員なのよ…ほんとうに年収は10万ドルなのよ…」

おかみさんからの問いに対して、アタシはひねた声でこう答えていた…

「アタシが最初に結婚をダンナが…ボブさんと同じ大ウソつきだったわ…けど、最初のダンナはプータローでアタシのヒモだったのよ…アタシがフライグブルグで結婚生活を送っていた時、ダンナは安定した収入のお仕事と肩書きを捨てて、実家のワインの卸し問屋を手伝いたいと言っていた…けれど、実家の家族との人間関係が原因で…家に居場所がないから…仕方なくアパートを借りて暮らしていたのよ…『シューカツするから…仕事を見つけるから…』とアタシに言って…シューカツをしていると思っていたら…アタシのヒモになっていたのよ…二番目のダンナはもっとひどい大ウソつきだったわ…『ふたりきりのスイートホームで甘い生活を送ろうね…』と言うたけど、実際はダンナの両親と妹さんと同居生活だったわ…ダンナは、母親と妹さんにヘコヘコとヒクツになっていた…ダンナの父親はアタシにやらしい目つきでながめていたわ!!アタシね!!二番目のダンナの父親と父親の友人たち数人から集団レイプの被害を受けたのよ!!」
「アリョーナちゃんは、嫁ぎ先で暴力の被害を受けていたのね。」
「ええ、その通りよ!!だから男なんか大きらい!!」

アタシは、缶ビールを一気にのみほした後、冷蔵庫から2杯目の缶を取り出して、フタをあけながらおかみさんにこう言うた…

「だからアタシは…やさぐれ女で生きて行くことに決めたわ…もう恋なんか…あきらめるわ。」
「アリョーナちゃんのつらい気持ちはよく分かるけど、どうして嫁ぎ先でもめ事ばかりが続いていたのか…はっきりとした原因が分からないのよ…あんたの実家の家族の顔が見てみたいわ。」
「ハバロフスクの実家のことは出さないでよ!!アタシはハバロフスクには二度と帰らないから!!」
「それじゃあ、どうやってこの先を生きて行くのよ?」
「やさぐれ女として生きて行くと言っているでしょ!!同じことばかりを聞いて来ないでよ!!」

おかみさんは、アタシの言葉に対して、大きくため息をついてからこう言いました。

「アリョーナちゃん、この広いアメリカ社会で女性ひとりが生きて行くと言うことはね、なみたいていの力ではやって行けないのよ…今のご時世は、リーマン(ブラザーズ・投資会社)が経営破綻して、アメリカ経済の先行きが不安定になっているし、欧州経済も回復のきざしが見えないそのまた上に、中東地域の治安が思うように回復していない…石油の単価の値上がりが続いている…アメリカ国内の失業率は改善しているとは言うけど…そんな世界情勢の中で、アリョーナちゃんはひとりの力だけでやって行けるの?」
「おかみさん。」
「アリョーナちゃん、もう一度ボブさんと話し合ってみたらどうかな?」
「イヤ!!絶対にイヤ!!死んでもイヤよ!!」
「どうして話し合いを拒否するのよ…アリョーナちゃんがひとりで生きて行くことができない場合のことも考えて、もう一度だけ話し合いをしてみたらというているのに…」
「イヤと言ったらイヤよ!!あいつはね!!アタシにきつい暴力を加えたあげくに、他の女を選んで、行方をくらませているみたいだわ…あいつがアタシに助けを求めてきても、アタシは一切助けないから!!」」

おかみさんは深いため息をついてから『そのように言うなら、もうダメね…分かったわ…』とアタシに言いました。

アタシはおかみさんに『一定のメドがたったら、ボストンを出て西海岸へ移住するから…』と伝えました。

アタシは、このあと西海岸へ出発する準備を始めました。

その頃、ボブさんはどこで何をしているのかは分かりませんが、男ギライになっているアタシは『あいつが事故で死のうが、マフィアのテッポウでドタマぶち抜かれようが、一切関知しないから…』と怒っているので、見離していました。
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