Secret Music
思いとクレッシェンド
「えっ……」

突然言われたことに、当然僕は戸惑う。作詞作曲?そんなこと今までしたことがない。

「あたし、一回でもいいから作詞作曲してみたかったんだよね!こう見えて詩を書くのが好きだし。でも、あたしは楽器が演奏できなくてさ〜……」

それで楽器の弾ける人、特にピアノの弾ける人を探していたらしい。そして偶然にも僕を見つけた。

「ね、お願い!」

鳥本さんが手を合わせて僕にお願いをする。僕は鳥本さんにピアノのことがバレた時点で拒否権などない。

我慢して作曲をするか、ピアノのことをバラされて平穏な生活が崩れるかだったら、前者しか選択肢はない。

「……わかった。初めてだし、うまくできるかどうかわかんないけど……」

僕がそう言うと、「やった〜!!」と言い鳥本さんが抱きついてきた。僕は一瞬何が起こったかわからなくなる。

「な、何してんの!?」

「えっ?何ってハグだけど……」

何か問題?と言いたげな目を鳥本さんは向ける。こんなところ誰かに見られたら……。僕はなんとか鳥本さんを引き剥がした。
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