エピソード 1




『立ち振る舞いは優雅で、美しい』

『声は鈴の音のように美しく、その微笑みは薔薇をも萎れさせてしまうほど』

『ひとたび剣を取れば、その姿は威厳に満ちて、まさに戦の女神が降臨したかのよう』

宮廷内で流れているこれらの形容詞は、すべてひとりの人物に該当するものである。

二ヶ月前、婚礼を挙げ、正式に王宮入りしたフィラーナは、今や誰もが認めるスフォルツア帝国の皇太子妃だ。

長年、皇妃や側妃の不在だった王宮内は、フィラーナを迎えたことで一気に華やいだ。

皇帝は病床につくことが多いので、公務に赴くことが難しく、それらの役割はすべて皇太子夫妻が担うことになったのだが、フィラーナはその地位に恥じぬよう、立派に務めを果たしている。

国内各地への視察や施設等への慰問は欠かさず、諸外国からの王族及び来賓も誠心誠意もてなす。中には、どんな娘が帝国の次期皇妃になるのか、高みから見てやろうと優越感を持って謁見に臨んだ者もいたであろう。しかし、その隙のない完璧な立ち振る舞い、堂々たる姿、それでいて少女らしい可憐さを残すフィラーナに、感嘆し心酔する者が続出したという。

だが、それは外交面だけではなく、実は結婚直後は国内でも見られた動きだった。女性を遠ざけていた皇太子の相手はどんな人物か、皆が気になっていた。聞けば領地からあまり出てこなかった田舎育ちの令嬢だという。特に、皇太子に相手にされなかった都会育ちの令嬢たちにとって、フィラーナは、羨望の的であるのと同時に、一度拝見してその泥臭さを内心笑ってやろうと目論む女性たちの、格好の餌食であった。