星のキミ、花のぼく
Prologue

追いかけられることに、追い詰められることに、嫌気がさしていた俺の瞳に、君は偶然、映りこんだだけだったんだ。

「お前でいい、ケッコンしてくれ」

縋るような思いであおった、じわり喉を焼く辛いウイスキーと共に、飲み込んだはずの言葉は声になって君のもとへ届いていた。

「………え?」

酔って頭の回転が鈍くなっていた俺は、怪訝な顔をされたことだけが不快で堪らなかった。

「え、ちょ、ちょっと、待って………!」

困惑している君を他所に、俺はバッグから乱暴に、とある紙切れとペンと印鑑を出すと、殴りかかるようにペンを走らせた。

だんっと勢いよく印鑑を叩きつけて、満たされた気分で俺は言い放った。

「だからお前でいいって言ってんの。結婚しろ。」

ああ………冴えた頭で思い返してみれば、俺はなんて取り返しのつかない、アホなことをしたのだろうか。

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