死者の闇〜最期のメッセージ〜
ジョブズ
藍が通報してすぐに警察がやってきた。藍は身分証明書を出し、監察医として現場に入る許可をもらう。

「亡くなったのは、この家の主人である村松(むらまつ)かけるさん。三十五歳の農家です」

刑事の説明を聞きながら、藍は遺体を観察する。村松かけるの遺体はリビングにあった。机に突っ伏して亡くなっている。その顔は苦痛で歪んでいた。

「死因は、現時点では推測することができません。解剖をしてもよろしいでしょうか」

刑事と村松かけるの妻に藍が言うと、「そんな!主人をこれ以上傷つけるなんて!」と妻は泣き出す。藍は説得を始めた。

「お気持ちはよくわかります。大切な人をこれ以上傷つけたくない、その気持ちは痛いほどわかります。しかし、解剖はその人の最期を唯一知ることができる方法です。監察医という仕事が存在するのは、その人の最期を無駄にしないため、その人がもしも殺害されていたならばその人の人生を奪った犯人を特定するため、この仕事があるのです」
< 11 / 28 >

この作品をシェア

pagetop