たとえ君が・・・
第七章~たとえ君が未来を向いても~
「私、幸せだった。」
多香子が話始める。渉はそんな多香子を優しく微笑み見つめていた。

「慶輔と結婚出来て本当に幸せだった。」
「あぁ。」
多香子の瞳からは再び涙が流れ出す。
でもその表情は悲しみの表情ではなく、穏やかな笑顔だった。

「この世界を見せられなかったけど、慶輔の赤ちゃんを妊娠できたこと。この体に宿せたことも本当に幸せな奇跡だった。」
「うん」
「私、慶輔のこと大好きだった。」
「うん」
「私を大切にしてくれて、愛してくれて、幸せにしようとたくさん努力してくれた。なによりも、生きてくれた・・・。それだけで十分だったの・・・。」
「うん」
「だからこそ、二人を失って・・・悲しかった。うんん。今も悲しい。寂しい。つらい。苦しい。」
「あぁ。」
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