シンデレラには····程遠い

···出会い


「社長、今日はこの辺りで
食事に行きませんか?
オープンした店の視察を予て」と、快斗
俺の弁護士事務所は
兄のいるオフィスビルの中にある
と、言うか社長室の隣だ。
他にも仕事はあるが
ここから、出向く。

「ん?視察?」と、絢斗
「この後は、スケジュールは
何もございません。」と、潤
「潤が、そういうなら。」
「なんで、潤なんだよ。
誘ったのは、俺でしょ」
「お前は、時々、胡散臭い事を
仕出かすからな。
俺を体よく使ったり。」
「それでは、片付けます。」
「潤も潤だ。たまには、俺を立てろよ」
「快斗、俺にあたるな。」
そう話ながらも
潤は、机の上を綺麗に片付けて
兄・絢斗に上着を着せている。

ホントに癪にさわるぐらい
良い男なんだよな。
同じ兄弟でも俺と違う。

三人でエレベーターを降り
兄の社用車になる。
運転手に行き先を告げる間に
兄は、目を閉じた。
リムジンで、
兄が一番後、向かいに俺と潤
潤が
「何か、飲まれますか?」
と、訊ねたが
「嫌、良い」
と、目を閉じたまま答えた。

直ぐに店に着き
三人で、レストランへと入ると
急にオーナーが現れて
店長が直ぐにかけつける
「そんなに慌てなくて
大丈夫だよ。
食事をしに来ただけだから。」
と、俺は言いながら
店内を見ると
チラリと風花ちゃんが見えた。
店長の案内を無視して進み
「風花ちゃん、鈴香ちゃん
いらっしゃい。」
と、言うと二人が立ち上がり
俺と俺の後ろにいる
兄に頭を下げた。
「どうぞ、座って
兄さん、一緒で良いよね。」
と、言うと
兄にジロリと睨まれたが
頷いたので
風花ちゃんを俺と潤で挟み
潤と兄の間に鈴香ちゃんを
座らせた。
注文をし終わると兄が
「この間のパーティーでは
助けて貰いありがとう。」
と、鈴香ちゃんに言った。

まったく、この人は
動揺することはないのか
なんで、二人を呼んだか
わかってるなんて

鈴香ちゃんは、
「いえ、ですぎた事をしたと
思っていました。
それなのに、食事にお呼ばれして
申し訳なくて。」
と、言うと
「嫌、助かった。
お客様に嫌な思いをされずにすんだ。
俺は、藤堂・クラーク・絢斗だ。」
「あの私は、菅野鈴香
大学三年です。」
と、鈴香ちゃんが言うと
「大学三年?何専攻?」
と、潤が····
「あっ、申し訳ありません。
藤堂社長秘書の
須藤 潤と申します。」
「文学部でフランス語を専攻しています。」
と、鈴香ちゃんが答えると
「俺は、藤堂・クラーク・快斗
弁護士です。こちらの方の弟になります。」
と、挨拶すると
風花ちゃんが
「私も·····した方が?」
と、言うから
「問題ない。」
と、絢斗さん。

それからは、料理が次々に届いて
皆食べ始めた。

手を出しかねていると
「どうした?食べないのか?
他に食べたいものがあれば
それを注文するか?」
と、言う絢斗さんに
「いっ、いえ。
すごい量だなぁ、と思っただけです。
ありがとうございます。」
と、慌てて鈴香が答えると
「そうか?それなら
沢山食べると良い。」
と、言われて
「はい。」
と、絢斗さんの顔を見ると
優しい眼差しで見ていたから
私も嬉しくなって微笑むと
絢斗さんは、ハッとした顔をして
私の頭を撫でてくれた。

その二人を見て
快斗も····
潤も····
風花も····
ただ···ただ···びっくりしていた。
< 9 / 83 >

この作品をシェア

pagetop