人魚のお姫様
海に浮かぶ島国、カイル王国。世界の国々に比べると国土は小さめだが、美しい街並みは観光客を虜にし、世界一の軍力を持っている。

「風が、気持ちいい〜……」

カイル王国で一番海に近いこの村には、村一番の美女がいる。

「やあ、エラ!買い物の帰りかい?」

美しい水色の長い髪を潮風に揺らし、足を止めて海を眺めていた女性は声をかけられる。隣の家に住む男性だった。

「はい。パンがなくなったので」

「パンなら、あそこの角を曲がったところの店がおいしいよ。あっという間に売り切れになっちゃうんだ」

「そうなんですか。知らなかったです。また今度、買ってみますね」

女性の名は、エラ・カッシング。この村で編み物教室を開いている二十歳になったばかりの女性だ。白い肌と美しい水色の髪、そして華やかな顔立ちは男女問わずによく見とれられてしまう。

水色の髪は、この国では珍しい色だ。なぜ髪が水色かというと、大きな理由があるのだが……。
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