【女の事件】十三日の金曜日
第6話
近所の奥さまから変な目付きで見られたふきこは、戸坂さんカタのおじいさまが腹上死で亡くなられたと言ううわさを聞いたので『もしかしたらアタシもご近所さまから変な目付きで見られているのではないのか…』と想って、恐くなっていた。

そうしたことが原因で、ふきこは久通の祖父の介護を続けて行くことをやめかけていた。

『アタシ…もしかしたら結婚相手を間違えてしまったみたいだわ…仲人さんにだまされてしまったのかもしれないわ…』と思い込んでいたふきこは、冷静に物事を考えることができなくなっていた。

久通自身も、もっと早い時期に結婚をしたかったのにどうしてふきことお見合いをして結婚をしたのであろうか…と思うようになっていたので、ふきこのことを激しくきらうようになった。

そうしたことは、ふきこの義弟の久秀の気持ちにも現れていた。

結婚したいと言うても、身丈に合う条件ではないからお嫁さんが来てくれない…

お嫁さんが来てくれないから代わりにふきこが久秀のカノジョになっていることは、よくないことではないのか?

経済的に自立ができないことにいらだちを募らせている久秀は、ここへ来ましてガマンの限度が来ていたので、気に入らないことがあればふきことひろつぐの母子に強烈な暴力をふるうので、久秀の心は大きく壊れていた。

日ましに家族関係が悪化していたので、仲よく暮らして行くことができなくなっていた。

ふきこが近所の奥さまから変な目付きで見られてしまった日の翌日の正午過ぎのことであった。

久秀が勤務している工場の休憩室にて…

久秀は、休憩室でお弁当を取り出した後にひとりでお弁当を食べようとしていた。

その時に、職場の人が久秀にふきこが来ているよとやさしく言うた。

けれど、久秀は思いきりキレていた。

「ふざけんなよ!!オレはひとりでお弁当を食べたいのだよ!!」
「そないに怒らんでもええやないか…兄嫁さんはお前がひとりぼっちにさせたくないと思って一緒にお弁当食べようと言ってくださっているのだよ…カノジョと一緒にお弁当を食べている気分でおいしく食べたらどうなんや…」

久秀は、仕方なくお弁当を持ってふきこが待っている場所へ行った。

しかし、久秀はふきこと顔を合わせたとたんに思い切りキレてしまった。

「オラオドレ!!何で勝手に職場へ来たのだ!!帰れや放火魔!!」

久秀は、ふきこに向けてお弁当を投げつけた後、端にあったものでシツヨウに殴り付けていた。

ふきこがぐすんぐすんと泣いている時に、久秀は背中を向けてその場から立ち去った。

ふきこは、泣きながら歩いて家へ向かっていた。

ふきこは、結婚相手を間違えてしまったみたいだわと思っていたので離婚することを考え始めていた。

アタシは…

なんのために入江の家に嫁に来たのかしら…

アタシは…

義弟のカノジョ代わりじゃない…

アタシは…

おじいさまとあられもないことをするためにダンナと結婚したのじゃない…

それなのに、どうしてアタシはキンリンから変な目で見られないといけないのかしら…

気に入られているとは言うけれど…

気に入られているのは、ダンナのおじいさまだけであって、義父母と義弟と義妹からは気に入られていないのよ…

ダンナも、変な目付きでアタシをみている…

もうアタシは…

入江の家で暮らして行くことができないわ…

その頃であった。

ところ変わって、高松市番町にある久通が勤務している銀行の出張所にて…

久通は、昼休みを返上してクレーム処理の書類の整理をしていた。

この時に、上司の広永さんが久通に声をかけてきた。

「久通さん。」
「課長。」
「もうそろそろ昼ごはんにしたらどうかな?」
「もうすぐ終わわります…」
「ああ…そのままでいいから聞いてくれるかな?」
「なんでしょうか?」
「久通さん…久通さんは7年間出張所で働いていたよね。そろそろなんとかしてあげたいと想っていたので、いいお話を持ってきたよ。」
「いいお話ってなんなのでしょうか…」
「久通さん…ここの出張所はね、3月31日をもって閉鎖することが決まっているのだよ。」
「そんなことは言わなくてもわかっていますよ。」
「久通さん…」
「課長!!わたくしは、出張所になった後も文句ひとつも言わずに、安いお給料にも文句言わずに会社のためにがまんして非正規の契約社員で働いてきたのですよ!!それなのに今ごろになって閉鎖だなんて…わたくしはなんのためにここで働いていたのか…課長!!聞いているのですか!?」
「聞いているよぉ…久通(ひさみち)さんが出張所に変わった後に契約社員に格下げしてしまったことについてはあやまるよ…結婚したいと思っていた時期に契約社員にしてしまったことでつらいおもいをさせてしまったことについては…」
「あやまるよあやまるよあやまるよあやまるよ…何なのですか課長は一体!!わたくしは、出張所が閉鎖された日をもって契約を破棄することを決めました。2度と銀行の仕事にかかわりませんから、そのつもりでいてください!!」
「わかったよ…久通さん、契約社員を破棄したいと言うのだね…ほんならそうしようわい…話と言うのは破棄した後のことで二つあるのだよ…久通さんが正社員じゃないと結婚した意味がないのであれば大阪の本店に来てほしいと言う話があるのだよ。」
「銀行の仕事はやめるといよんのに、なんで本店に行けと言うのですか!?銀行をやめるといよんのに、本店に行く話をしてくるな!!」
「わかったよ…ほんなら本店にそのように言うとこわい…銀行をやめるのだったら、伊予三島の知人に頼んで、地元のJAにお願いしておこうか?こちらは正社員として登用されるのだよ。」

久通は、広永さんから提示された四国中央市内あるJAの支所へ転職する話は受けたが、いずれにしても家族と話し合いをしなければならなかった。

その日の夜のことであった。

家に帰ってきた久通は、両親に伊予三島のJAへ転職する話をしたが、話し合いは思うようにすすんでいなかった。

話し合いが進まない原因は、久通が家を出て豊岡台にあるマンションへ移り住むと言い出したので、両親がイヤそうな表情で反論をしていた。

「家を出て暮らすって…それじゃあ、おじいちゃんの介護はどうするのよ!?」
「何やオドレ!!オレが家を出て暮らすのがそんなにいかんのか!!」
「いかんとかは言っていないわよぉ…」
「それだったら何でイヤそうな表情で反論してくるのだ!!じいちゃんの介護をふきこに任せていたあんたらがよくねえのだよ!!」
「ふきこさんにおじいちゃんの介護のことをお願いしたことについては悪かったわよ…」
「悪いと思うのであれば逃げるなよ!!」
「逃げてなんかいないわよぉ…」
「だったら向き合えよ!!」
「向き合うわよ…そんなことよりも、伊予三島のJAの支所へ転職するのであれば、家から通うことができるじゃない…」
「ダメなんだよ!!」
「どうしてダメなのよぉ…」
「家にいたらふきこがじいちゃんとあられもないことをするからダメと言っているのがまだわからんのか!!」
「久通!!」
「もうわかった…」
「あなた!!」

父親は、失望した表情でこう言うた。

「もうわかった…久通が家を出て暮らすのがいいと言うのであればもういい…」
「それでええんやね…」

久通は、ひと間隔を空けてから両親にこう言うた。

「ふきこのことだけど…3月31日に高松の出張所が閉鎖される日をもって離婚するから…」
「離婚…」
「オレは本気や!!ふきこがじいちゃんとあられもないことをしているからひろつぐがワガママばかりこねるようになったのだよ!!そこに気がつけよあんたらは!!ああ!!」

久通は、両親にふきこと離婚をすると言い放った後、家を飛び出して行った。

家を飛び出した久通は、JR川之江駅でよしえと会った後、下りの特急列車に乗ってどこかへ行ってしまった。

久通が家を飛び出した時、ふきこは祖父の介護を終えてひといきついていたが、久通が離婚することを両親に言うていたことを聞いたので、心により深い傷を負ってしまった。

アタシは…

おじいちゃんとあられもないことをしていないのに…

どうして久通さんは…

アタシを攻撃するのかしら…

もういや…

もういや…

アタシ…

離婚したい…

離婚したい…

もういや!!

こんなことになるのだったら…

結婚しない方がよかったわ…

もういや…

もういや…

もういや…
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