桜の舞う頃……
 2024年3月下旬ー。
 あたしは、地元の桜祭りに来ていた。
 桜並木を見ながら、少しずつ歩いて行いる、あたし…。
 そして、桜並木の真ん中くらいに来た時、春風が、優しく吹いた。
 その春風に舞う、桜の花びら…。
 あたしは、そっと、右手を差し出した。
 すると、1枚の桜の花びらが、手のひらに舞い落ちた。
 あたしは、その花びらを、両手で、軽く握りしめ、胸元に持ってきて、そっと目を閉じ、微笑んだ。
 そんなあたしの様子を見つめる、1人の男性がいた。
 男性は、あたしに、近付き、優しく肩を叩いた。
 あたしは、目を開き、男性を見た。
 だけど、誰か分からなくて、あたしは困りながらも、笑顔をした。
 男性は、あたしを見て、涙が溢れ、頬をつたい落ちた。
 あたしは、左手で、男性の涙を拭い、男性の頬に優しく触れた。
 男性は、自分の頬に触れている、あたしの手を、優しく握り、余計、涙を流した。
 あたしは、微笑んだ。
 男性は、両手で、あたしの頬を包み、Kissをしようとした。
 あたしは、それを、受け入れようと、目を閉じた。
 男性の唇が、優しく、あたしの唇に触れた。
 そして、今度は、あたしの耳元で、小さく「愛してる。」と言い、あたしを抱きしめた。
 あたしは、ニコニコ笑顔になった。
 男性は、今度、ぎゅーっと抱きしめ、頭を撫で、また、耳元で囁いた。
 「ふふ…。
黒髪だから、太陽の熱を吸収して、熱くなってる…。
暑くない?
大丈夫?」
 あたしは、頷いた。
 2人を春風が包み、桜が舞った。
 そんな2人の様子を、般若のような顔で見つめる、2歳くらいの女の子を抱いた、女性がいた。
 男性は、般若顔の女性に気付かず、再び、あたしに、優しく、Kissし、無邪気に笑った。
 そこに、エプロンをつけた、女性が近づいて来た。
 その女性は、あたしに、優しく、声をかけた。
 「はずきちゃん。
桜は、もう、終わりです。
バスに乗りましょう。」
 あたしは、男性から離れ、エプロンの女性に微笑んだ。
 男性は、とっさに、あたしの手を取った。
 「どこに行くの?!」
 あたしは、困って、苦笑い…。
 代わりに、エプロンの女性が、答えた。
 「家に帰るんですよ。
あなたは、はずきちゃんの何なんですか?
知り合い?
ただの知り合いじゃないですよね?
さっき、Kissしてたし。」
「はずきは、俺の大切な人で…。」
 エプロンの女性は、何となく気づいた。
 「「大切な人。」…。
悪いけど、はずきちゃんは、覚えてないわよ。」
「えっ…。」
「今後、混乱を招くような事は、しないで下さいね。
それじゃ、失礼します。」
 エプロンの女性は、あたしの手を取り、バスへと向かった。
 男性は、エプロンの女性が言った意味が、理解できず、その場に、あたしのぬくもりを感じながら、崩れた。
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