逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
適度な距離
彼からのメール。
私も彼のことがわからないけど、きっと彼も千歳と二人きりで食事をしていたことを
不愉快に思い、憤慨しているかもしれない。
あのメールや電話の数から責められることをある程度は覚悟した。

“ 分かりました。 ”


その日の夕方、初めて出会った会員制のレストランで。
お店に入ると店員さんが案内してくれた。
まだ到着していなかったから一先ず飲み物を頼み深呼吸。

15分程遅れてやってきた彼。

「遅くなってごめん。」

「いえ…。」

「早速、昨日のことだけど…。」

まるで、会議の本題に入るようにつらつらと話だす。

「昨日は思いがけない所で出会っておどろいたよな。
あの人は取引先の人で、同じ母校の同級生なんだ。
あの場所でアポイントをもらって、こちらが接待という立場だったんだけど、
誤解させてしまったなら悪かった。
あの後、ここで一杯だけ飲んでもらって帰ってもらった。」

「そうですか。私が動揺してご迷惑をお掛けしたならすみません。
私も、同級生とはいえ食事会であの場にいたのですから誤解させてしまったなら申しわけありませでした。」

「食事の前にメールをもらっていたみたいだから、分かっているつもりだよ。」

どこまでもよそよそしい、やり取りに居心地が悪くこの場を去りたい。



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