懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
1.有能秘書の欲しいもの
「それで私ね、小学校高学年に上がる頃くらいまで、ずっと〝自分は魔女なんだ〟って本気で信じてたんです」
「あぁ……へぇ……」

 私の話を聞いた『匂宮(におうのみや)グループ』のお嬢さまはリアクションに困り、美しいお顔を引きつらせて相槌を打った。
 私は淹れてきたばかりの紅茶を相手に差し出しながら話を続ける。

「馬鹿ですよね~。べつに魔法が使えたわけでもないのに、母親から〝 あなたは魔女なのよ!〟って言われただけでまんまと信じちゃって」
「……宮内さんって変わっているのね」
「そうなんです。ちょっと変わった子どもだったみたいで」
「いえ、〝だった〟っていうか……」

 何か言いたげな匂宮のお嬢さまが紅茶に口をつけたのを見て、自分もカップを手に取り紅茶を飲む。
 新しく取引することになった会社の社長さんから〝ごあいさつに〟と頂戴した紅茶のギフト。なんでも世界の名だたる高級ホテルで愛用されている代物だそうで、インフューザーの形からしてもうお洒落だ。香り豊かで味わい深い。

 そんな一杯をいただきながら、ふと思った。

(これ……お母さんにも飲ませてあげたいな。自分で買ったらいくらするんだろう?)


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