愛してるからさようなら
帰京
「ただいま」

優くんから遠く離れた実家に戻り、私は両親に説明をする。

「あのね、
 話さなきゃいけないことがあるの」

私は妊娠していること、一人で産もうと思ってることを説明した。

当然、両親は反対もしたし、相手について問い正しもしたけれど、私は決して優くんのことは言わなかった。

「もう終わったことなの。
 でも、この子はちゃんと産んで
 育てたいから、近いうちに部屋を見つけて
 引っ越そうと思う」

 実家には、兄夫婦が同居してるから、私が子連れで住んだら迷惑になる。

 私は、翌日からセントラルキッチンで、慣れない事務を始めた。

上司の好意で、悪阻中でもできる仕事に回してもらえたのだ。

 休日に不動産業者を回り、安定期に入ったところで私は引っ越しをした。

妊婦教室も両親学級も1人で参加した。

仲睦まじい夫婦が羨ましくないと言ったら嘘になる。

それでも私は、1人でこの子を育てるって決めたんだ。


 そうして、9月末まで働いて産休に入った。
予定日は10月17日。
もう、いつ生まれても不思議じゃない。

私は、実家に帰り、出産に備える。

10月20日。
私は3280gの元気な男の子を産んだ。
名前は優誠くんから一文字もらって『(まこと)』と名付けた。

 11月末まで実家でお世話になり、12月からアパートに戻る。
母が家事を手伝いに来てはくれるが、1人での子育ては想像以上に大変だった。

優くん、会いたい……

叶わないと知りながらも、ついつい思ってしまう。

そんな時、私は誠と左手の指輪を交互に眺める。

大丈夫。
優くんはここにいる。

私は自分を励まして子育てを頑張る。

 そうして数ヶ月後の9月、誠を保育園に入れて、私は仕事復帰を果たした。

 母子家庭の優遇措置があるとはいえ、子育てにはお金がかかる。

産休中はお給料の6割しか支給されないから、仕事復帰して働かなきゃ‼︎

誠には寂しい思いをさせるけど、時短勤務を申請したから、我慢してね。
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