懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
明かされた真実



亮介は社長室のデスクに両肘を突き、組んだ手を睨むようにしていた。
ぎゅっと握ったため爪が甲に食い込む。


『お金で終わりにしてください』


里帆から決定的な言葉を浴びせられたのは昨日のこと。里帆がいくら否定しようともお腹の子どもの父親が自分だとはわかっていたが、金で解決する事態になるとは考えてもいなかった。

里帆が手切れ金を持って姿をくらませたと知ったとき、自分の知らない彼女の一面を見せつけられ、激しく動揺した。

そんなはずはない。彼女はそんな女ではない。

そう否定するいっぽうで、金を受け取った事実が甘い考えを打ち砕く。

だったら、なぜなにも言わずに去った?

その問いの答えが、なによりの証拠だった。

それでも彼女が望めば、子どもを一緒に育てていく気持ちがあったのも事実。亮介の中にはまだ、里帆の存在が消えずに残っていた。
ところが昨日、彼女が二度目に選んだのもやはり金。亮介ではなかった。

虚無の暗闇に突き落とされた感覚が亮介を包み込む。
深いため息をついたそのとき、社長室のドアがノックされ成島が入室した。

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