美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~

運命の・・・

教室の開始時間まではまだ時間があった。

瑠花は、マリアと共にショッピングセンターと駅を繋ぐ歩道を歩いていた。

すると、マリアが突然走り出したのであわてて瑠花も後を追う。

その先には白い杖をついた女性が立ち往生していた。

マリアは女性に

「通れないですよね。今退けますね」

と声をかけると、歩道に置かれていた自転車を動かし始めた。

「ありがとうございます」

女性は頭を下げると、杖で地面を辿りながら真っ直ぐ進んで行った。

・・・彼女は視覚障害者だった。

路面にはられた点字ブロックは、安全な歩行のための命綱とも言える。

その上には何も置かないことになっているが、今回のように、非常識な人が自転車等の障害物を置くなどして、無意識に彼女達を困らせることがあるのだとマリアは言った。

「瑠花は彼女達を可哀想だと思う?それとも人と違うことを馬鹿にしている?」

瑠花は真剣に首を横に振った。

「手を貸す人、同情する人、蔑む人、無関心な人。人の数だけいろんな考えの人がいるわ。家庭環境や政治の状態がその価値観に大きな影響を与えることもある」

マリアは敬虔なクリスチャンだ。

瑠花は無宗教だが、無神論者ではないし、母も自分の価値観を娘に押し付けようとはしなかった。

「何を良しとして何を悪とするか?結局はその人次第。でもね、必然的に似た考えの人が集まって家庭や地域、コミュニティを形成していくのものなのよね」

母の言葉は呟きのようにも、瑠花へのメッセージのようにも聞こえた。

悲しみや苦しみの度合いからしたら、瑠花のオッドアイの悩みなんて足元にも及ばないのかもしれない。

だからといって瑠花の悩みがちっぽけとは言えないだろう。

瑠花は彼女を馬鹿にはしていない。

同情もしていない。

もしも、困っていたら助けてあげたいとも思う・・・。

だが、それが彼女の求める答えなのか?

゛同じ価値観゛

それは歩み寄り、お互いの気持ちや態度を晒さなければわからない答え。

瑠花にはマリアが瑠花に伝えたいことがわかって涙が出そうになった。

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