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 通りに沿って建つ壁は何十メートルと続いていて、終わりが見えなかった。個人宅とは思えない豪邸を前に、足がすくむ。

 美しい曲線を描いたロートアイアンの門扉脇にインターフォンらしきパネルがあるけれど、これを押したところで適当にあしらわれることはわかっていた。真正面から乗り込んでも相手にしてもらえないことは、過去の経験から実証済みだ。

 塀の高さはおよそ三メートル。その上にさらに金属のフェンスが張り巡らされている。

「たしか、こっちの方に……」

 斜め掛けにしたバッグからスマホを取り出そうとした拍子に、パスケースが地面に落ちた。慌てて拾い上げると、スーツ姿で正面を見据えている自分の顔が目に入る。

 一年前から派遣社員として働いている『二條物産ロジスティクス』のセキュリティカードだ。